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家族がいる場合と住宅ローンがある場合の上乗せ
自分が働けなくなる備えを整えたあと、次に向き合うのが「自分がいなくなったあと」の話です。会社員と違い、ひとり事業者は公的な遺族保障の形が異なり、住まいの借入の扱いも人によって違います。このページは死亡保障に限定して、世帯の状況ごとに必要額がどう変わるのかという構造を扱います。金額そのものではなく、計算の組み立て方を持ち帰ってください。

公的な遺族保障のかたちが、働き方で変わる

日本の公的年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。厚生年金に加入していた期間がある人の遺族には遺族厚生年金が関わる場合がありますが、国民年金のみで働いてきた期間が長い自営業者の世帯では、遺族への給付が遺族基礎年金中心になることがあります。遺族基礎年金には子に関する要件があり、子が一定の年齢を超えると対象から外れる仕組みです。
つまり、会社員時代の感覚のまま「遺された家族には年金が出るだろう」と考えていると、想定と実際がずれる可能性があります。過去に厚生年金に加入していた期間がある人は、その期間も含めた扱いになる場合があるため、自分の加入履歴の確認が出発点です。
要件や金額は制度の定めによって細かく決まっています。ねんきん定期便やねんきんネット、年金事務所の窓口で、自分の場合にどうなるかを必ず公式に確認してください。ここで押さえたいのは、働き方によって土台の厚みが違うという一点です。
住宅ローンは、団信の有無で必要額が大きく動く
住宅ローンを組んでいる場合、まず確認するのは団体信用生命保険に加入しているかどうかです。加入していれば、契約者が亡くなったときに残債が保険で処理される仕組みのため、遺された家族の住居費は管理費や税金などに限られることがあります。この場合、死亡保障で住居費を丸ごと用意する必要は薄くなります。
一方、フラット型の住宅ローンなどでは団信が任意になっている場合があり、健康状態によって加入していない人もいます。また、店舗兼住宅の事業用借入や、リース契約、事業のための借入は団信の対象外であることが一般的です。事業側の借入がそのまま遺族に残る構造になっていないか、契約書を確認してください。
賃貸で暮らしている世帯は、家賃が毎月そのまま続きます。転居して家賃を下げる選択肢があるかどうかで、必要な保障の年数が変わります。持ち家か賃貸かではなく、借入と契約の中身で判断するのが実務的です。
配偶者の収入と子の年齢で、必要額の形が変わる
必要な死亡保障は、遺された世帯の支出から、入ってくるお金を引いた不足分の累計です。配偶者に安定した収入があり、生活費をおおむね賄えるなら、上乗せは子の教育費や一時的な費用に絞られます。配偶者が事業を手伝っていて、自分がいなくなると世帯収入がまとめて消える構造なら、必要額は大きくなります。
子の年齢も重要です。必要な期間は、末子が独立するまでの年数でおおよそ区切れます。子が幼いほど必要年数が長く、成長するほど短くなるため、必要額は時間とともに逓減していくのが自然な形です。今の必要額を一生涯続ける前提で考えると、過大になりがちです。
計算の手順は、止まった月の収支シートの家計欄をそのまま使えます。自分がいなくなった場合に減る支出(自分の生活費、事業の固定費のうち廃業すれば消えるもの)を差し引き、残る支出に必要年数を掛ける。ここから、遺族年金の見込み、配偶者の収入、手元資金を引いた差が、検討すべき上乗せの目安になります。
事業をたたむ費用も、遺される支出に含める
ひとり事業者ならではの論点が、自分がいなくなったあとの事業の後始末です。事務所や店舗の賃貸借契約、リース中の機材、仕入れの買掛金、外注先への未払い、進行中の案件の対応。これらは遺族が引き継ぐことになり、片付けるまでに費用と時間がかかります。
解約に違約金が発生する契約、原状回復が必要な物件、残債のあるリース。金額の大きいものから順に一覧にしておくだけでも、遺族の負担はかなり変わります。取引先の連絡先、使用しているサービスのアカウント、請求と入金の管理場所を書いた覚書を、家族が見つけられる場所に置いておくことも備えのひとつです。
この後始末の見込み額は、死亡保障の必要額に加える項目です。生活費の話だけで完結させず、事業側の清算費用まで含めて数えるのが、本サイトの立場です。
単身や、扶養する人がいない場合の考え方
扶養する家族がいない場合、死亡保障の必要額は小さくなります。この場合に検討するのは、生活を支えるためのお金ではなく、自分の後始末にかかる費用です。葬儀にかかる費用、住まいの片付け、事業の清算、借入が残っている場合の返済。連帯保証人を立てている借入があるなら、その人に負担が移る点も確認が必要です。
必要額が小さいなら、保険ではなく預金で備えるという判断も成り立ちます。死亡保障に払う保険料を、就業不能や賠償、老後の積み立てに回すほうが、自分の生活実感に合う場合があります。家族構成が変わったときに見直せるよう、判断の理由をメモに残しておくと次の点検が楽になります。
親を扶養している、きょうだいに仕送りをしているなど、法律上の扶養家族でなくても実質的に支えている相手がいる場合は、その支援が止まる影響も数えてください。世帯の形は人それぞれで、既製の目安額をそのまま当てはめる必要はありません。